人材不足などの影響から、業務改善などに役立つAIを導入する企業が増えています。
ソニービズネットワークス株式会社が発表した調査によれば、新型コロナウイルス蔓延開始時期前後から3年以内にAI導入を検討している企業が66.6%となっています。
以前はAI開発に莫大なコストがかかっていましたが、AI開発ツールを利用し開発すればコストを抑えられるのも、要因の一つでしょう。
今回のテーマはAI開発ツール。
AI導入を検討し、開発ツールを探している方の参考になれば幸いです。
AI開発ツールを導入するメリット
以前のAI開発は、専門家がチームを組み、膨大な時間とコストをかけて行われていました。
ただ、定型化されているAIモデルがあり、それらの技術も転用できるため開発にかかる期間やコストが短縮されています。
また、AI開発ツールも豊富で、これらを利用すれば専門知識がなくてもAI開発が可能です。
ここからは、AI開発ツールを導入する以下のメリットについて詳しく解説します。
低コストでスモールスタートが可能
AI専門エンジニアがいなくても開発が可能
効率よく迅速にAI開発が可能
AI開発ツールを導入するメリットの1つ目は、効率よく迅速にAI開発が可能になることです。
AI開発ツールを利用せず開発を行う場合、環境の構築やデータの準備・形成などが必要になります。
ただ、AI開発ツールには開発に必要な機能がそろっているため、環境準備などの手間が不要になり、その分の開発期間も短縮できます。
低コストでスモールスタートが可能
AI開発ツールを導入するメリットの2つ目は、低コストでスモールスタートが可能になることです。
通常AIを開発する場合は、専門のエンジニアに依頼し莫大なコストと期間をかけ行います。
また、開発するAIが複雑だったり開発期間が長期化したりすれば、開発コストがさらに増加するため、資金力のある大企業しか取り組めませんでした。
しかし、AI開発ツールを利用すれば開発コストを抑えられるため、資金が潤沢でない企業も取り組めます。
結果、スモールスタートが可能になり、開発に取り組むハードルが下がりました。
AI専門エンジニアがいなくても開発が可能
AI開発ツールを導入するメリットの3つ目は、AI開発専門のエンジニアがいなくても開発が可能になることです。
前述の通り、従来AI開発は専門の知識とスキルを有するエンジニアがいなければ開発できませんでした。
AI開発ツールを利用すれば、AIに関する専門知識がなくても開発できます。
とくに、GUIツールと呼ばれる開発ツールであれば、初心者でも直感的な操作によるAI開発が可能で、エンジニアに依頼するコストを削減できます。
≫≫ AI開発は個人でもできる!人工知能の知識からスキルに合わせた作り方を解説
目的別AI開発ツール
冒頭でお伝えした通り、AI開発ツールとはAIを開発する際に必要な機能を備えたツールで、利用すれば低コストで効率的に開発ができます。
さまざまなAI開発ツールが存在し、中にはGUIツールと呼ばれるものもあります。GUIツールとは、ノーコードで誰でも簡単にAI開発ができるもののことです。
ここからは、下記目的別にAI開発ツールについて詳しく解説します。
データ分析
導入検証
生成AI
機械学習(マシンラーニング)
深層学習(ディープラーニング)
画像認識
音声認識
AIモデル構築
AIモデル構築は、言葉通り実際にAIを開発するプロセスです。
AIモデル構築の開発ツールを利用すれば、モデルが用意されているため一からAIを開発する必要がありません。
自社用のAIモデルをマウス操作だけで直感的に開発できるノーコードツールもあり、コストの削減や開発期間を短縮する効果があります。
また、AI開発をするための専門的な知識やスキルを持たない人でも開発が可能。
AIモデル構築の開発ツールには、Azure Machine Learning StudioやDeep Analyzer、Amazon SageMakerなどがあります。
≫≫ AI開発環境の選び方とおすすめツール10選を徹底解説!
データ分析
AIは大量のデータをインプットした上で、その情報のルールやパターンを学習しアウトプットしているため、精度の高いAIを開発するには多くのデータを学習させる必要があります。
精度の高いAIを開発するためには豊富なデータの準備が必要で、しかもデータはそのまま使えるわけではなく、処理をしなければなりません。
処理とは、準備したデータを整形しAIが学習しやすくするためのプロセスで、具体的には以下を行います。
◾️|外れ値の除外
◾️|欠損データの補完
◾️|データへのタグ付け
◾️|カテゴリ変数のエンコーディング など
データの収集や処理を手作業でするとなると膨大な手間がかかりますが、AI開発ツールを利用すればスピーディーに行えます。
データ分析のAI開発ツールには、Google Cloud Speech-to-TextやNeural Network Consoleなどがあります。
≫≫【2023年最新】AIデータ分析ツールのおすすめ10選!機能比較と使い方を徹底解説
導入検証
AIは一度開発をすれば完成するわけではなく、現場に導入し検証しながら再学習を行い精度を高める必要があります。
どんなに素晴らしいAIが開発できたと思っても、現場で活用し成果が上がらなければ意味がありません。
また、定期的に再学習を行わない場合、アウトプットの精度は高まらないでしょう。
開発ツールを利用すれば、導入検証や再学習の効率化や自動化を狙えます。
導入検証のAI開発ツールには、Autify for WebやMagic Pod、Minervae PoCKETなどがあります。
生成AI
生成AIは自動で文章や画像などを生成するAIです。
例えば文章生成AIでは、人間が使う文章の構造や特徴などをAIが理解し、命令の実行や質問への回答を行う「自然言語処理」が可能です。
後述する深層学習の技術を利用できるようになったため、精度は高まり商品説明やWebメディアなどのコンテンツ作成に活用可能になりました。
また、企業のホームページなどに実装されているチャットボットにも生成AIが活用されています。
生成AIの開発ツールには、Google AutoMLやDeep Analyzer、Apple Create MLなどがあります。
≫≫ 自然言語処理(NLP)とは?技術の基礎から活用事例まで徹底解説
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機械学習(マシンラーニング)
機械学習(マシンラーニング)はデータ分析手法の一つで、機械(AI)がデータをもとに学習してパターンやルールを発見する方法を指します。
大きくわけて学習と推論の2つのプロセスが存在。
学習は機械がパターンやルールを発見するプロセスで、推論は学習した機械にデータを入力し、正確に学習がされているかを確認するプロセスです。
機械学習のAI開発ツールには、Core MLやGoogle Cloud AutoMLなどがあります。
深層学習(ディープラーニング)
深層学習(ディープラーニング)は前述した機械学習の一つで、コンピューター上に人間の脳を再現した仕組み(多層ニューラルネットワーク)を使用し行います。
大量のデータをインプットさせれば、人手をかけずともAIが自動でデータのパターンやルールを学習可能。
画像認識や音声認識、自然言語処理などのAIを開発する際に利用されています。
深層学習のAI開発ツールには、Deep AnalyzerやDEEPstationなどがあります。
≫≫ ディープラーニングと機械学習の4つの違いとは?それぞれの特徴をわかりやすく解説
画像認識
音声認識は、画像や映像を認識し何が映っているかを判断する技術です。
防犯カメラや工場の異常検知、顔・指紋認証などに利用されており、深層学習により画像認識の精度が向上しました。
画像認識のAI開発ツールには、AIメーカーやLabellio、Panasonic AI画像認識エンジン構築サービスなどがあります。
≫≫ AIを活用した画像認識とは?仕組みから活用事例まで徹底解説
音声認識
音声認識は人の音声などをテキストデータに変換する技術です。
以前は精度が低く活用できませんでしたが、高精度である音声認識AIの開発が可能となり、スマートフォンやスマートスピーカーなどに活用されています。
また、文字起こしやコールセンターの自動音声応答などにも利用され、業務効率化が期待できるでしょう。
音声認識のAI開発ツールには、Google Cloud Speech-to-Textやcommubo、Deep Analyzerなどがあります。
AI開発ツールの選び方
前述の通り、AI開発ツールはいろいろなベンダーが開発・提供しています。
それぞれのAI開発ツールに特徴があり、得意・不得意分野が異なるため、適切なものを利用しなければ効果を発揮できません。
ここからは、AI開発ツールを選ぶ際の以下ポイントについて、詳しく解説します。
AI開発ツールの操作性
コミュニティやサポートの充実度
目的を明確にする
AIは多種多様なものが存在し、それぞれ強み・弱み、特徴などが異なり、その開発に利用するAI開発ツールも豊富にあります。
どのようなAIを開発したいか、そのためにはどのAI開発ツールを利用するかを見極めなければなりません。
まずは、AIを開発する目的や解決したい課題を明確にしましょう。
また、開発にかける予算を算出する際も、AI開発・導入をした場合に期待できるコスト削減効果などを用いる必要があるため、目的が明確でなければ予算の検討もできません。
AI開発ツールの操作性
AI開発ツールを選ぶ際には操作性も重要です。
AI開発ツールは、どのツールを利用するかで操作性が異なり、初心者でも直感的に操作ができるものからPythonなどのプログラミング言語が必要なものまで千差万別です。
開発の担当者がどの程度の知識やスキルを有しているかにより、使いやすいツールが変わるため、予算を鑑みながら選択しましょう。
最近は、1ヵ月の無料トライアルを設けていたり、一部機能は無料で利用できたりするAI開発ツールも多いため、まずは利用し使用感を確かめるのがおすすめです。
また、無料で使えなくても問い合わせをすれば、詳しい操作画面などの資料や説明を受けられるケースもあるでしょう。
≫≫【2023年最新】AIツール徹底比較!機能や用途別のおすすめ10選を紹介
コミュニティやサポートの充実度
AI開発ツールは使いやすさが魅力ですが、利用していれば不明点が発生するケースがあります。
AIの開発は複雑で、最初から最後までスムーズに進行するわけではなく、サポートがあったり情報収集ができたりした方が良いでしょう。
多少利用料が発生しても、サポートを受けられた方が結果的にコストが安くなる可能性も多分にあります。
また、利用者が多ければ多いほどコミュニティで活発に意見交換がされているため、開発における情報を集めやすくなります。
AI開発ツールを選定する際は、目的やコスト、操作性などだけでなくコミュニティやサポートの充実度を確認するのがおすすめです。
まとめ
本記事では、AI開発ツールを導入するメリットや、目的別AI開発ツール、AI開発ツールの選び方について解説しました。
以前は専門家に依頼し、多額のコストと期間をかけAI開発を行っていましたが、最近はサポートツールも多く、複雑なAIでなければコストを抑えて開発できます。
ただ、AI開発ツールと一言でいっても多種多様に存在するため、自社がAIを開発する目的や、操作性、コミュニティやサポートの充実度を検討・確認の上選択しましょう。