近年急激に注目度が高まっているAI。AIつまり人工知能は想像以上に日々の生活に大きく関わっています。
今回は、AIを活用できる以下の3大クラウドサービスについて解説します。
クラウドサービスを導入する場合、それぞれのクラウドサービスを比較して特徴を捉えることが重要です。
自社の問題解決に最も適したクラウドサービスを選ぶためにも、この記事で3大クラウドサービスに関する理解を深めておきましょう。
この記事を読むことで、以下の項目について理解することができます。
機械学習・AIに関連するサービスの種類
AIに関連性の高い3大クラウドサービスと利用料金
3大クラウドサービスの導入事例
ぜひ参考にしてみてください。
機械学習・AIに関連する5つのサービス
機械学習・AIに関するサービスは大きく5つの種類に分けられます。
ここでは、種類別のサービスに見られる特徴に注目し、それぞれどのような役割を担っているのか、どのような場面で活用されているのかについて詳しく解説します。
≫≫ AI(人口知能)とは?基礎概念から仕組みや種類まで徹底解説
自然言語処理サービス
画像認識/解析サービス
予測分析サービス
自動化サービス
機械学習プラットフォーム
機械学習プラットフォームとは、その名の通り機械学習のモデルが組み込まれたプラットフォームのことを指します。
機械学習とは、多数のデータをもとにコンピュータがアルゴリズムに基づき情報分析する手法のこと。インプットされたデータが増えれば増えるほど、学習能力が働き、データの精度が向上するのが特徴です。
機械学習は以下の3つに分類されます。
教師あり学習
教師なし学習
強化学習
教師あり学習では、あらかじめ正解となるデータをインプットしておくのが特徴。教師なし学習では、AIが自動的にデータをグループ分けするなどして、自分で分析を進めます。
強化学習では、学習の仕方自体をAIが考え強化していくもので、目的を果たすためのプロセスもAIが判断し選択するものです。
例えば電子メールのスパム判定や機械の異常検知などは教師あり学習の活用事例としてよく挙げられます。
教師データと呼ばれるデータをはじめに入力しておくことにより、そのデータをもとに「正常」「異常」などの判断が可能になります。
≫≫ ディープラーニングと機械学習の違いとは?それぞれの特徴をわかりやすく解説
自然言語処理サービス
人が発する言葉をコンピュータ上で処理する技術を備えるのが自然言語処理サービス。
検索エンジンや機械翻訳、カスタマーサポートなどでよく目にするチャットボットも活用事例に該当します。
さらに身近な例を挙げるなら、Amazonの「Alexa」やAppleの「Siri」も自然言語処理サービスにより実現したもの。
人の言葉をまるで人間のように聞いたり見たりすることで、さまざまなリクエストに応えてくれる優れものはAIの産物です。
≫≫ 自然言語処理(NLP)とは?技術の基礎から活用事例まで徹底解説
画像認識/解析サービス
画像認識・解析サービスは、画像に映るものを自動で認識し、その物体が何なのかを自動判別するもの。
AI機能を備えたカメラで取得した画像が自動解析されることにより、セキュリティ面の向上や集客状況の把握などに役立ちます。
このサービスは、施設の出入り口の入退管理や作業現場での安全点検などに活用されています。
≫≫ AIを活用した画像認識とは?仕組みから活用事例まで徹底解説
予測分析サービス
予測分析サービスを活用すれば、過去の行動パターンをもとに、これから先に起こり得るさまざまなデータを先取りすることが可能です。
将来の潜在顧客を見極めたり、市場の動向を予測したりと、ビジネスに欠かせない予測分析サービス。
営業活動の効率化はもちろんのこと、高速道路の渋滞予測や、精度の高い天気予報なども予測分析サービスを活用している事例に該当します。
ビジネスチャンスの拡大やリスク回避のために、AIデータ分析ツールが注目されています。 AIデータ分析ツールを利用すれば、大量のデータ整理や分析、必要情報の抽出ができます。 今回のテーマはAIデータ分析ツール。この記事を読むことで[…]
自動化サービス
自動化サービスは、これまで人の手で行われていた作業をAIが担うことで、さまざまな機械の自動化を実現しました。
近年話題になっている自動車の自動運転もその一つ。周囲の情報を認識し、状況に応じた運転操作を自動で行うことが可能になっています。
また、AI自動採点システムでは、選手の演技をAIが認識・採点することで、人間以上の精度で公正なジャッジが可能に。誤審を確実に予防できる解決策として高く評価されています。
≫≫ ChatGPTのビジネス活用!企業の導入事例からアイデアを含めて10個紹介
AIに関連する3大クラウドサービスと利用料金
出典:Synergy Research Groupより発表された「2021年のクラウド市場規模」
上のデータはSynergy Research Groupが発表したもの。
このデータによると、GCP、AWS、Azureのシェアがそれぞれ33%、22%、10%と上位3位を占めています。
さらに、これら3社の合計は65%となっており、クラウド市場の半数を大きく超える数字です。
世界的に大きなシェアを誇る3大クラウドサービスですが、先ほど紹介した以下の5つのサービスをそれぞれに備えています。
機械学習プラットフォーム
自然言語処理サービス
画像認識/解析サービス
予測分析サービス
自動化サービス
世界でトップ3のシェアを持つ3大クラウドサービスは下記3つです。
GCP、AWS、Azure、それぞれが持つ上記5つのサービスの名称は以下の表の通りとなります。
GCP | AWS | Azure | |
機械学習プラットフォーム | Google Cloud AI Platform | Amazon SageMaker | Azure Machine Learning |
自然言語処理サービス | Cloud Natural Language API | Amazon Comprehend | Azure Cognitive Services Language Understanding (LUIS) |
画像認識/解析サービス | Cloud Vision API | Amazon Rekognition | Azure Cognitive Services Computer Vision |
予測分析サービス | BigQuery ML | Amazon Forecast | Azure Machine Learning Studio |
自動化サービス | Cloud Functions | AWS Step Functions | Azure Logic Apps |
次の項目から、それぞれのサービスについて詳しく解説します。
Amazon Web Services(AWS)
Microsoft Azure(Azure)
Google Cloud Platform
Google Cloud Platform(GCP)はGoogle社がクラウド上で提供するサービスの総称です。
Googleの社内でも実際に活用されているGCP。その技術やインフラを使って企業がWeb開発業務を効率的に行うことが可能です。
最大のメリットは世界最大級のデータセンターを持つGoogleのインフラを利用できる点にあり、この点が後に紹介するAWSやAzureとの大きな違いであると言えます。
GCPを導入すべき企業は、ビッグデータの高速分析を必要とする企業。
Googleならではの安定したインフラを利用できるGCPなら、データ解析に最適な環境を維持できることは保証されています。
Google Cloud Platform では、Google と同じインフラストラクチャでアプリケーション、ウェブサイ…
Google Cloud AI Platform
Google Cloud AI Platformは、機械学習を進めるために学習や推測などを効率的に行うための環境を構築するGCPの機械学習プラットフォームです。
代表的なものとして挙げられるのがGoogleWorkspace。
GmailやGoogleドライブ、ドキュメントやスプレッドシートなどが用意されており、業務効率化に欠かせないツールとして人気を集めています。
利用料金:Googleクラウドユーザーであれば使用料は限られているが無料で利用可能。プロジェクトや予算に合わせて選べるオプションが豊富。
詳細はGoogle 公式ページを参照ください。
Cloud Natural Language API
Cloud Natural Language APIはクラウド上で言語処理や分析を行うGCPの自然言語処理サービスの名称です。
APIで分析したい書類をアップロードすれば、AIが言語を認識してテキスト分析を行い、その結果が出力されるというもの。
メールなどの文面から送信者の感情を分析・把握する事ができたり、領収書や請求書をアップロードすることで、経費の管理に役立てたりと使い道はさまざまです。
利用料金:5000ワードまでは無料で利用可能。その後は以下の料金が適応されます。
引用元:Google公式HP「Cloud Natural Language API」
Cloud Vision API
Cloud Vision APIはGCPの画像認識・解析サービスの名称です。
画像に写っている物体を特定したり、画像内のテキストを検出したりすることが可能です。
Cloud Vision APIは、アダルトコンテンツや暴力的なコンテンツなどの「不適切なコンテンツ」を検出したり、画像ないの顔検出などに役立ちます。
利用料金:最初の1,000ユニットまでは毎月無料で使用可能、それ以降は以下の料金が適応されます。
引用元:Google公式HP「Cloud Vision API」
BigQuery ML
BigQuery MLはGCPの予測分析サービスのことを指します。
専門知識なしに機械学習を可能にし、かつ高速なデータ分析ができる点が特徴。
未来を正確に予測分析することができるため、売上予測などに大変役立ちます。
利用料金:最初の1TBは無料で、以降1TBのデータ分析につき5米ドルの従量課金制。
用途やプランにより設定が異なるため、詳細はGoogle公式ページでご確認ください。
Cloud Functions
Cloud FunctionsはGCPの自動化サービスのこと。
人が管理せず、クラウド上でAIが自動的にコードを実行できるのが特徴です。
ファイルの作成から、変更や削除などまでが可能となり、クラウド上で行われるさまざまなイベントに無人で対応することが可能。
管理にかかる人件費の削減に大きく貢献しています。
利用料金:呼び出し200万回まで無料で利用可能、以降1回あたり0.0000004米ドルの単価制。コンピューティング時間ごとの料金は以下の通り設定されています。
引用元:Google公式HP「Cloud Functions」
Amazon Web Services
Amazon Web Services(AWS)はAmazonが展開している世界一のシェアを誇るクラウドサービスです。
Amazonがこれまでに構築した独自のインフラを活用し、今では世界190カ国以上で広く利用されています。
AWSでは、ありとあらゆるジャンルのITリソースやインターネットサービスを利用することができ、これまでのユーザー事例も豊富。
今回取り上げる3大クラウドサービスの中でも最も歴史が長いAWSは、信用度も高く、クラウドサービス導入を検討する際の選択肢としては外せません。
Amazon Web Services は、信頼性と拡張性に優れたクラウドコンピューティングサービスを低料金で提供します…
Amazon SageMaker
Amazon SageMakerは、AWSの機械学習プラットフォームのことで、機械学習モデルの開発からデプロイまでをスピーディーに可能にするサービスです。
トレーニングデータの前処理や教師データの作成、学習モデルの構築から実行までをフルマネージするサービスであるため、機械学習のために他のソフトをインストールする必要がない点が特徴。
移行自体は簡単で1日もかからず終了、手順もシンプルなため、導入に手間がかからない点も魅力です。
ゲームユーザーに表示される広告をリアルタイムに最適化したり、ユーザーに配信するニュースを選定したりと、幅広い分野で活用されています。
利用料金:無料利用枠あり(2ヶ月間)、その後は従量課金制。詳細はAmazon公式HPでご確認ください。
Amazon Comprehend
事前トレーニング済みのモデルを使用し、言語からさまざまな情報を取得できるAmazon ComprehendはAWSの自然言語処理サービスです。
テキストをもとに、人物や場所などの情報検出、個人識別情報の検出、キーフレーズの検出などを行うことが可能です。
これにより、商品レビューを書いた人の感情を数値化したり、長い文章の中でどの単語が何度使用されているかを把握したりすることができます。
利用料金:使用する機能により単価が以下の通り設定されています。
引用元:Amazon公式HP「Amazon Comprehend」
Amazon Rekognition
Amazon Rekognitionは、AWSの画像認識・解析サービスです。
画像に移るシーンや物体、テキストを認識し、そのデータを分析するのが主な機能。
物体認識では、そこに映る人の人数を数えたり、顔検出では年齢や性別などの判定も可能です。
利用料金:静止画と動画、カスタムラベルでそれぞれに料金が設定されている。12ヶ月の無料利用枠あり。
引用元:Amazon公式HP「Amazon Rekognition」
Amazon Forecast
Amazon ForecastはAWSの予測分析サービスの名称です。
時系列のデータと、それに関するさまざまなデータを組み合わせて予測分析を行うのが主な機能ですが、複数のアイテムを一度に予測できるのが特徴。
過去のデータから、今週の売上や来客数などの予測を立てることができ、マーケティングの分野でも良く活用されているサービスです。
利用料金:従量課金制、以下参照。
出典:Amazon公式HP「Amazon Forecast」
AWS Step Functions
AWS Step Functionsは、AWSの自動化サービスの名称です。
200以上のAWSサービスを組み合わせられるだけでなく、可用性の高い別のコンピューティングサービス、AWS Lambdaを呼び出すことも可能。
これらの機能により、ワークフローを可視化して操作可能な状態を実現します。
サーバー不要のアプリケーションを短時間で構築できるため、業務効率アップに大きく貢献しています。
利用料金:月4,000回の状態遷移までを無料利用枠、以降は状態遷移1,000回ごとに0.025米ドルの従量課金制。参考:Amazon公式HP「AWS Step Functions」
Microsoft Azure
Microsoft Azure(Azure)は、Microsoftが提供するクラウドサービスです。
Microsoftといえば古くからWord・Excel・PowerPointなどが有名ですが、クラウドサービス自体は2010年に開始されたサービスです。
特に、Windowsとの互換性が高いAzureは、Windowsを日頃から利用している企業に適しており、その場合の導入もスムーズなのが特徴です。
Microsoft Azure のオープンで柔軟なクラウド コンピューティング プラットフォームを使用すれば、目的を持っ…
Azure Machine Learning
Azure Machine LearningはMicrosoftが提供する機械学習プラットフォームです。
専門知識がなくても目的に適したアルゴリズムを選択できる「機械学習アルゴリズムチートシート」の他、GUIの画面上でデータの読み込みからデプロイまでの一括操作ができるAzure Machine Learning Studioなどがメイン機能となります。
利用料金:月額~3,400円(スペックにより異なる)詳細はMicrosoft公式HPでご確認ください。
Azure Cognitive Services Language Understanding (LUIS)
Azure Cognitive Services Language UnderstandingはAzureの自然言語処理サービスの名称で、その略称はLUISです。
AIによる言語処理により、全体の意味を予測し関連性の高いデータを引き出す会話型AIサービスで、質疑応答の他、自動翻訳や文字起こしなども行うことができるのが特徴です。
利用料金:無料で100万作成トランザクションと1,000の予測トランザクションが可能。
Azure Cognitive Services Computer Vision
Azure Cognitive Services Computer Visionは、Azureの画像認識・解析サービスを指します。
画像や動画を自動認識し、データを解析することで、物体の検出処理などを行うAIです。
主な機能は物体認識に加え、空間認識、認識済み画像のキャプション作成などです。
利用料金:12ヶ月間は5,000トランザクションまで無料で使用でき、その後は1,000トランザクションごとに1米ドル〜の従量課金制。詳しくはMicrosoft公式HPでご確認ください。
Azure Machine Learning Studio
Azure Machine Learning Studioは、Azureの予測分析サービスを指します。
AIにデータを読み込ませると、そこから変換や予測分析が行われ、その結果を出力するところまでが一括して行われます。
操作性が良く、モジュールの入出力をドラッグアンドドロップで接続するだけで、機械学習モデルが構築できるのが特徴。
農作物の良否を自動判別したり、気温や降雨量から収穫量の予測をしたりすることが可能です。
利用料金:無料プランとスタンダードプランがあり、無料プランでは10件ごとのモジュール最大数が100に制限されるほか、実験ごとに1時間のみ使用可能となります。
スタンダードプランは9.99米ドルが月額料金となりこれらの制限が大幅に緩和。詳細はMicrosoft公式HPでご確認ください。
Azure Logic Apps
Azure Logic Appsは、Azureの自動化サービスの名称です。
企業間などで使用されるアプリケーションやシステムをコネクタとして接続し、ワークフローを作成するのが主な機能。
これにより、ワークフロー作成時にコードが不要になり、プログラミング未経験者によるアプリ作成が可能となります。
利用料金:1アクションごとに従量課金。詳細はMicrosoft公式HPでご確認ください。
3大クラウドサービスの導入事例
ここからは3大クラウドサービスの導入事例を紹介していきます。
【AWS】任天堂株式会社の事例
【Azure】FRONTEOの事例
【GCP】株式会社テレビ朝日の事例
株式会社朝日が運営するポータルサイト「favclip(ファブクリップ)」は、ファッション・エンタメ・グルメなど幅広いジャンルの小ネタを配信する人気サービス。
このポータルサイトに導入されたのがGCPです。
結果、10分近くを要していた手動のスケールが、ミリ秒単位でのオートスケールに変わり、インフラに人員を割く必要がなくなったことでコスト削減と業務の効率化につながりました。
【AWS】任天堂株式会社の事例
世界的な知名度を誇る任天堂株式会社は、2016年に「Super Mario Run(スーパーマリオ ラン)」の iOS 版のサービス開始にあたりAWSを導入。
世界150もの国と地域を対象としていたサービスだったために、全世界への一斉ローンチを実現し、かつそれに耐えうるインフラを必要としていた任天堂株式会社。
セキュリティ対策が万全で、拡張性の高いAWSを採用することで、何一つ問題なく全世界へのサービス開始が実現した成功例です。
【Azure】FRONTEOの事例
FRONTEOはライフサイエンス領域に特化したAIツール「Concept Encoder」を独自開発。
これまで、3000万を超える生物医学領域の論文から確認すべき論文の候補を絞り込む際、その手間がかかることに加え、検索する人により選ばれる論文にばらつきが出るなどの問題を抱えていました。
その問題を解決するために、AIを活用したFRONTEO。人の手によるキーワード検索では見つけられない論文を含め、必要なデータを迅速に検索することを可能にしたのです。
Azureを採用したのは、多くの人が活用しやすいサービスを目指すため。
結果的に監視コストを99%削減することに成功しました。
まとめ
この記事では、3大クラウドサービスについて、それぞれのAIツールやサービスの特徴を詳しく解説しました。
どのようなAI関連サービスが、どの場面で活用されているのかが理解いただけたことでしょう。
幅広い分野で導入が加速するAI。
導入の際には、それぞれの特徴を踏まえ、目的達成に最も適したクラウドサービスを選び、活用されることをおすすめします。