2023年はChatGPTの話題が沸騰したことで、AIに対する興味関心を持つ人達が急増しました。
本格的なAI時代が到来したとささやかれる一方で、汎用人工知能(AGI)という技術も注目を集めています。
本記事では、今後のデジタル技術を牽引するかもしれない汎用人工知能(AGI)について、その開発背景から今後の予測までを解説します。
一読いただければ、これからの技術革新に対する理解がより深まるはず。
ぜひ最後までご覧ください。
汎用人工知能(AGI)とは
汎用人工知能(AGI)を一言で言い表すと、「より高度な知能を持ったAI」といえます。
AGIとは、「Artificial General Intelligence」の略称です。
通常のAIの総称である「Artificial Intelligence」に、「全般的」や「汎用的」といった意味を持つ「General」が加わっているのです。
日本語の意味からも理解できるように、通常のAIと比較してより広範囲でありながら応用力を持った人工知能といった意味合いになります。
従来のAIは指定されたプログラミングやデータを元に、外部からの情報に対して機械的に反応することを得意としています。
しかし、汎用人工知能(AGI)は元から存在するデータやプログラミング内容の外から情報を取得し、推論する能力を持っているのです。
2030年にシンギュラリティは起こるのか
AIとAGIの違い
現在話題になっているChatGPTなどのAIは、非常に狭い範囲で活躍することを目的にしています。
これまで存在したチャットボットも同様であり、会話を超えた行動は難しいという現状があります。
そのため、通常のAIは「特化人工知能」と呼ばれ、名称の通り「何かしらの行動に特化したAI」として開発されています。
対して、汎用人工知能(AGI)は広範囲に及ぶ問題解決能力を兼ね備えています。
本来であれば人間の手によって学習に必要なデータを提供しなければいけないところを、汎用人工知能(AGI)は自らの手で情報を集めます。
それらの情報を元に問題を推察、分析することで幅広い分野の問題に対応するのです。
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2030年にシンギュラリティは起こるのか
高度な知能を持つ人工知能の誕生は、「シンギュラリティ(技術特異点)」に対する不安を増加させます。
確かに、汎用人工知能(AGI)は人間の脳のような機能を持っています。
子どもが情報を集め、それぞれの内容を考え、自分の力で問題を解決する過程となんら変わりないといえます。
そして汎用人工知能(AGI)は、得た情報を元にさらに賢くなっていくのです。
駒澤大学経済学部准教授の井上氏は、2030年頃を目処に汎用人工知能(AGI)ができると予想しています。
しかし、まだまだ人間の振る舞いを真似する程度の完成度であり、一般的な「シンギュラリティ」と呼ばれる段階には及ばないとしています。
その一方で、2060年頃には、人間が行う仕事の多くに対応できると予想しています。
2030年は「シンギュラリティ」にはまだ早そうですが、その後の展開については注目が必要といえそうです。
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汎用人工知能(AGI)が開発されるまでの歴史
自ら学習する驚異的な汎用人工知能(AGI)は、どのように開発されてきたのでしょうか。
開発段階に分けて、その歴史を確認していきます。
知識ベース(エキスパート)システムの開発
ニューラルネットワークの発展
ディープラーニングの登場
汎用人工知能(AGI)の開発
人工知能の初期研究
人工知能という概念は、1950年に執筆された『計算する機械と人間』という書籍に初めて登場します。
この書籍は数学者のアラン・チューリングによって書かれ、その後の人工知能開発にも大きな影響を与えました。
そして1956年、科学者によって開催された「ダートマス会議」によって、現在にも続く人工知能という言葉が誕生します。
この段階で、多くの科学者たちに「人工知能」の概念が広がり、研究が活発になっていくのです。
知識ベース(エキスパート)システムの開発
1965年、「Dendral」という知識ベースシステムが開発されました。
エキスパートシステムとも呼ばれるこのシステムによって、特定分野の知識を有した機械が、まるで人間のように物事の推理や判断ができるようになりました。
そして1972年に開発された「Mycin」によって、多くの人々に同システムが認知されるようになったのです。
しかし、人間の手によって情報を入力するなど、膨大なコストと手間がかかるという欠点も有していました。
ニューラルネットワークの発展
現在もAI技術に欠かせないニューラルネットワークは、人間の脳神経細胞を模倣し数学的にモデル化したものです。
1958年には開発が進んでいましたが、その段階では複数の問題を抱えていたことから次第に廃れていきます。
その後1986年に「MLP」と呼ばれるモデルが開発され、ニューラルネットワークは発展します。
しかし、複雑な処理が可能になった反面、当時のコンピューターシステムでは容量が足りず、学習が向上しないという問題も新たに浮き彫りになったのです。
ディープラーニングの登場
2006年にはオートエンコーダという技術を元に、「DNN」というニューラルネットワークが開発されます。
深層学習と呼ばれる、現在のAI技術において最も重要な要素がこのタイミングで完成したのです。
「MLP」の課題であった学習不足についても、インターネットサービスの浸透によって解消し、膨大なデータを高速で集められるようになりました。
AI技術発展の障壁を乗り越えたとして大きな注目を集め、新たな時代に突入することになったのです。
≫≫ ディープラーニングと機械学習の違いとは?それぞれの特徴をわかりやすく解説
汎用人工知能(AGI)の開発
2016年、これまでAIの勝利が難しいとされてた囲碁において、初めてプロ技師がAIに敗北しました。
「アルファ碁」と呼ばれるソフトは高度なディープラーニング技術を持っており、本格的な人工知能の登場が近いと大きな話題となったのです。
しかし、実際には人間の考えを模倣するにはまだ遠く、感情の再現などは実現できていません。
2023年時点でも、汎用人工知能(AGI)の開発は進められており、日々研究者によって試行錯誤が繰り返されているのです。
汎用人工知能(AGI)がもたらす社会への影響
人間の脳をそのまま再現するともいえる汎用人工知能(AGI)は、今後人間社会にどのような影響を与えるのでしょうか。
以下の内容について、それぞれ解説していきます。
新たなビジネスモデルの構築
社会生活の変化
労働環境の変化
汎用人工知能(AGI)の完成によって、多くの仕事が自動化され雇用機会が大きく減少することが考えられます。
汎用人工知能(AGI)は、人間には再現不可能な速度と精度で膨大なデータを処理します。
そのため、単純なルーティンワークは人間によって行われるものでは無くなるかもしれません。
しかし、ここまで大きな変化ではありませんが、機械による労働環境の変化はすでに起きているともいえます。
例えば、自動レジの導入や自動アナウンス、チャットボットによる応答や無人店舗などはその一例といえるかもしれません。
それでも、人間でなければいけない仕事は確実に存在しています。
汎用人工知能(AGI)の登場に対しても動じないために、専門性を高め日々行動する必要性があるかもしれません。
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新たなビジネスモデルの構築
汎用人工知能(AGI)によって雇用が失われるという予測がある一方で、新しいビジネスモデルが構築される可能性も示唆されています。
アメリカ投資銀行大手であるゴールドマン・サックスは、汎用人工知能(AGI)が開発されてからの10年間で、世界中で生産される商品やサービス総額が7%程増加すると想定しています。
多くの商品やサービスの生産体制がより効率化することで、人間は本来やるべき仕事に専念できるかもしれません。
結果として、これまでなかった需要が発生する可能性は十分に考えられます。
また、医療分野や教育、エンタメといった分野においても、これまでに生まれなかった新サービスが登場すると予想されています。
代替する仕事もあるかもしれませんが、その分新しい需要が生まれる可能性は高いといえます。
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社会生活の変化
汎用人工知能(AGI)が浸透した社会が機能するためには、数多くの課題を解決しなければいけません。
誤った目的で利用された場合、大きな被害をもたらし社会的機能を一瞬で麻痺させることも考えられます。
また、所得格差の拡大や雇用機会に恵まれる人とそうでない人など、社会が二分化する可能性も懸念されています。
しかしプライバシーの問題、倫理観の徹底をもとに適切に運用できれば、社会生活は非常に豊かなものになるはずです。
汎用人工知能(AGI)の登場は、社会全体に大きなインパクトと変化をもたらすことが考えられます。
しかし、必要以上に恐れずポジティブな面もあることは理解しておきましょう。
今後の汎用人工知能(AGI)で期待される未来
汎用人工知能(AGI)が実現した時、人間と人工知能が共存しながらこれまでになかった新たな価値観、体験が数多く創出されることが期待されます。
人間だけが持つ感性と、人工知能特有の計算能力やデータ処理が上手く合わさることで、社会全体が大きく豊かになるはずです。
開発者は未来を良くするために日々開発に勤しんでいます。
そのためには、倫理的な配慮、多くの人々に人工知能が受け入れられる状況など、数多くの事柄をバランスよく進めなければいけません。
漫画の『ドラえもん』のように、まるで人間のように自然な会話をしながら生活するロボットも登場するかもしれません。
現在はSFの世界、空想上の出来事だと思われることが実現する未来は、われわれにこれまでとは大きく異なった世界を見せてくれるはずです。
まとめ
汎用人工知能(AGI)に関する基本的な概要から開発までの歴史、そして社会へもたらす影響などを解説してきました。
現段階では2030年に完成が予測されており、2060年にはその機能をフルに活用すると予測されています。
実現した場合には、これまで人類が開発してきたどんな発明よりもスケールが大きく、とてつもない影響力を発揮することが考えられます。
しかし適切に利用することで、人類の生活は体験したことがないレベルで豊かになるはずです。
必要以上に恐れず、全員が正しい知識を身に着けてその日を迎えられるよう、日々情報を取り入れていかなければいけません。