AI倫理とは?AI技術の社会的影響と対策について

AI倫理とは?AI技術の社会的影響と対策について

AIの成長が著しい昨今、便利になるだけでなくトラブルが発生し、話題となるケースがあります。

今回のテーマは、トラブルを防止するために必須のAI倫理について。

この記事を読むことで、以下の点について理解を深めることが可能です。

AI倫理の概要と必要とされている理由

AI技術による倫理問題

AI技術における社会的な影響と対策

今後ますます注目度が高まるAIについて知りたい方、AIの問題点と対策を知りたい方の参考になれば幸いです。

AI倫理とは何か?

AI倫理とは何か?

AI倫理とは、AIの設計やAIが導く成果・判断に関して推奨される指針のことです。

お掃除ロボットや自動運転など、私たちの身近でもAIが活用されたテクノロジーが生み出され、利便性が向上しています。

また、製造や小売・医療・金融業などさまざまな業界でも活用され、業務効率化や人手不足などの課題解決に貢献。

現状はまだ一部の活用に限定されていますが、今後AIの精度が上がり、さらに活用が進むでしょう。

その一方で、AIには懸念点もあります。

例えば、AIが事故を起こした場合の責任の所在は誰になるのか、AIに人権があるのかなどです。

ここからは、AIを利用する上で欠かせない、AI倫理について詳しく解説します。

AI倫理の定義
AI倫理の背景にある社会的・文化的な要因
Googleフォトの人種差別問題

AI倫理の定義

そもそも「倫理」とは、社会規範の一種で守るべきもののことです。

モラルや道徳などとも言われる倫理は、社会のルールとは別に、私たちが善悪の判断をする指針のようなもののこと。

私たちがAIと共存をしていく上で、考えなければならない問題がAI倫理です。

AI倫理とは、AIが人類に悪影響を与えないための規範であり、AIの設計から導き出される成果に関して推奨される指針のこと。

国内、国外問わず政府や団体、企業がAIに関するガイドラインを策定・発信し、人種差別などの問題を防ぐように取り組んでいます。

例えば、グーグルであれば「AI利用における基本方針」として、下記7つを掲げています。

◾️|社会にとって有益である
◾️|不公平なバイアスの発生、助長を防ぐ
◾️|安全性確保を念頭においた開発と試験
◾️|人々への説明責任
◾️|プライバシー・デザイン原則の適用
◾️|科学的卓越性の探求
◾️|これらの基本理念に沿った利用への技術提供
引用:Googleホームページ

日本政府も「人間中心のAI社会原則」を掲げ、下記7つの指針を発表しています。

◾️|人間中心の原則
◾️|教育・リテラシーの原則
◾️|プライバシー確保の原則
◾️|セキュリティ確保の原則
◾️|公正競争確保の原則
◾️|公平性、説明責任及び透明性の原則
◾️|イノベーションの原則
引用:内閣官房ホームページ

上記のように、さまざまな団体が指針を発表するなど、AI倫理が重要視されています。

AI倫理の背景にある社会的・文化的な要因

なぜ、AI倫理が求められているのでしょうか。

AI倫理が求められる背景には「シンギュラリティ」や「偏った判断による影響」の大きく2つの社会的・文化的な要因が挙げられます。

シンギュラリティとは、2045年にAIが急速に発展し人間の知能を超えるという考えです。

アメリカの人工知能研究の第一人者であるレイ・カーツワイルが大規模な研究を行い、2005年に提唱したことで注目されました。

多くのSF小説や映画で、高度な知識を持つAIが人類の終焉をもたらすことが描かれ、その代表作が1984年から公開された映画の「ターミネーターシリーズ」です。

もう1つの問題が、AIによる偏った判断による影響で、これまで実際にトラブルを招いたケースもあり、例えば下記が挙げられます。

Amazonの人材採用におけるAI活用の性差別問題

Amazonでは、人材採用においてAIを活用していましたが、男性を高く評価してしまう傾向があることが判明し、運用を中止しました。

男性を高く評価したのは、Amazonで過去に男性を多く採用する傾向があり、それをAIが学習したためです。

過去男性を多く採用した実績はありますが、それは能力の違いのみの差ではありません。

ただ、過去の実績を学んだAIは結果的に性差別を生み、能力を正しく評価できませんでした。

AI学習において、どのようなデータにもとづき学習を行うかで、結果に差が生まれてしまったのです。

Googleフォトの人種差別問題

Googleは、画像認識や音声認識など積極的にAIを活用しており、AI分野における最先端企業の一つと言っても過言ではありません。

ただ、Googleも過去AIに関するトラブルで問題となりました。

具体的には、Googleの画像認識で黒人を「ゴリラ」と判定してしまったことです。

原因は明確になっていませんが、Googleの画像認識AIはSNSをもとに学習が行われており、白人画像と比べ黒人画像の画像が少なく、十分な学習ができなかったこととされています。

Googleの画像認識AIのように学習データが少なければ、AIが間違った判断をしてしまう可能性があります。

上記は一例で、これ以外にもAIでのトラブルが起きています。

シンギュラリティや偏った判断の影響などを避けるために、AI倫理が重要です。

AI技術による倫理問題

AI技術による倫理問題

ここからさらに詳しく、AI技術による倫理問題について詳しく解説します。

責任の所在が確立しない
偏った判断や差別的な行動
プライバシーや個人情報の侵害

責任の所在が確立しない

AI技術による倫理問題の1つ目は、責任の所在が確立しないことです。

例えば、自動運転技術が採用された車が事故を起こした場合の責任は誰でしょうか。

車を運転していた人、開発販売したメーカーや部品を開発した企業、販売した販売店などさまざま考えられます。

AIが事故を起こした場合、現状は誰が責任を取るのかや、責任の所在を明らかにする法律が整備されていません。

偏った判断や差別的な行動

AI技術による倫理問題の2つ目は、偏った判断や差別的な行動です。

AmazonやGoogleの例を解説した通り、AI技術によりトラブルが起きたケースがありました。

他にもトラブルが起きており、Amazonの顔認証AIで、アメリカの上下両院議員の28名の顔を「犯罪者」と認識し、黒人系の議員の誤認識率が高かったことが問題となりました。

IBMやマイクロソフトの顔認証AIにおいても、白人男性に関する精度は高い一方、有色人種や女性はエラーが起きやすいことが分かりました。

プライバシーや個人情報の侵害

AI技術による倫理問題の3つ目は、プライバシーや個人情報の侵害です。

私たちがWEB上でサイトの閲覧や商品の購入をすると、自分の位置情報や、趣味、嗜好など個人情報が収集、分析されています。

また、匿名性の低いサイトでは、学歴や個人とのつながりなども分析されます。

得られた個人情報をAIが分析し「おすすめ商品」や「おすすめの動画」が表示。

気づかないうちに取得された個人情報が、企業間での売買の対象や流失するなどのトラブルのリスクがあります。

AI技術における社会的な影響と対策

AI技術における社会的な影響と対策

これまで、AI技術における倫理問題について解説しました。

AI技術は、私たちの生活に役立ち、業務の効率化につながるなど、多くのメリットがあります。

その一方で、これまで解説した倫理問題など、トラブルが発生するリスクもはらんでいます。

また、AI技術の普及は社会的にも大きな影響をあたえるでしょう。

例えば、雇用の変化で私たちの仕事は大きく分けると下記に分類されます。

◾️|肉体的労働が中心で、定型業務が多い仕事
◾️|肉体的労働が中心で、非定型業務が多い仕事
◾️|知識・技術的労働が中心で、定型業務が多い仕事
◾️|知識・技術的労働が中心で、非定型業務が多い仕事

上記のうち、肉体的、知識・技術的労働にかかわらず、定型業務が多い仕事は、AIに代替され雇用が減少すると予測されています。

ここからは、AI技術における社会的な影響と対策について詳しく解説します。

雇用の変化
人間の判断力の低下
価値観の変化

雇用の変化

AI技術による1つ目の社会的な影響が、前述の雇用の変化です。

定型業務が中心となる仕事は、AIで代替できるため需要が減少すると予想されています。

例えば下記の仕事が挙げられます。

◾️|工場勤務者
◾️|タクシー、電車などの運転士
◾️|スーパーやコンビニのレジ係
◾️|データ入力
◾️|銀行員
◾️|一般事務員
◾️|受付

一方で、新たに生まれる雇用もあり、例えばデータサイエンティストやデータアナリストのようなAIを活用する仕事が該当します。

もちろん、上記に該当しなければ、雇用が変化しないわけではありません。

例えば、税理士や弁護士など、暗記した知識を中心に仕事をしている場合は、淘汰される可能性があるでしょう。

AIであれば、人間が暗記できないような多くのデータを記憶し、そのデータに基づき判断を下せるようになるからです。

今後は、知識をどのように活かすのか、どのようにクライアントに伝えるのかなども重要になるでしょう。

今後も仕事を続けていくためには、AIにはできない「人が行う価値」を考え、仕事をするのが大切です。

人間の判断力の低下

AI技術による2つ目の社会的な影響が、人間の判断力の低下です。

AIの精度が向上し、正確な判断や結果が導けるようになると、すべてAIに任せ人間が考えなくなる可能性があります。

考える機会が減少すれば脳が衰退し、判断力が低下するでしょう。

すべてをAIにゆだねるのではなく、AIにより導き出された判断や結果をどのように活用するかを考えることが重要です。

価値観の変化

AI技術による3つ目の社会的な影響が、価値観の変化です。

これはAIに限らず、これまで開発されたテクノロジーや社会的な背景により、私たちの価値観は変化してきました。

長時間労働の是正や、終身雇用の終焉、リモートワークも、大きな価値観の変化の例ではないでしょうか。

AI技術が確立すれば、私たちの生活は劇的に変わり、それにともない日々求めるものが変わります。

価値観の変化に抗うのではなく、受け入れ、その上でどうするかを考えるのが重要です。

まとめ

まとめ

今回は、AI倫理の概要や必要とされている理由、AI技術による倫理問題、社会的な影響と対策について詳しく解説しました。

AIは、私たちの生活を豊かにするテクノロジーとして注目を集めている一方、シンギュラリティや偏った判断による影響など、トラブルを起こす危険性をはらんでいます。

トラブルを防ぐために、AIの設計やAIが導く成果・判断に関して推奨される指針であるAI倫理を定め、実践することが求められます。

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