AIの需要が高まり開発を行う企業が増えていますが、AI開発には多くのコストと時間がかかるなどの課題があります。
今回のテーマは、AI開発においてコストと時間を左右するAI開発環境についてです。
この記事を読むことで、以下の点について理解を深めることが可能です。
AI開発環境の概要
おすすめのAI開発ライブラリとルール
AI開発ツールの選び方のポイント
AI開発環境について知りたい方、利用を検討している方の参考になれば幸いです。
AI開発環境を構築する方法
AI開発は、膨大なデータの取り扱いなど情報処理が求められ、システム稼働の環境が必要になります。
具体的には、ビッグデータを保存するストレージや機械学習・深層学習(ディープラーニング)を行う高性能の計算能力を要したコンピューターが挙げられます。
ここからは、AI開発に使われる言語や開発環境を構築する手順について、詳しく解説します。
≫≫ AI(人口知能)とは?基礎概念から仕組みや種類まで徹底解説
AI開発環境を構築する手順
AI開発に使われる言語
プログラミング言語は、200以上あると言われておりそれぞれ特徴があります。
具体的には、例えば下記が挙げられます。
◾️|Python
◾️|SQL
◾️|JavaScript
◾️|R言語
◾️|C言語
◾️|C++
◾️|Julia
各プログラミング言語の特性上、得意不得意があるため開発するシステムにより、使われる言語が異なります。
上記のうち、AI開発でおもに利用される言語はPythonです。
Pythonは、可読性が高く習得しやすいプログラミング言語と言われています。PythonがAI開発で用いられるのは、TensorFlowやChainer、scikit-learnなどのさまざまなアルゴリズムの数式処理がまとめられたフレームワークが充実しているからです。
また、AI開発には統計学も用いられるため、Rが使用されるケースもあります。
AI開発環境を構築する手順
AI開発と一言で言ってもさまざまな工程が発生し、具体的には下記の通りです。
1. 目的を決める
まず、AIを開発する目的を決定します。
AIもさまざまな種類があり、用途や解決できる課題は多種多様。自社が何の目的で、AIを開発するのか決めましょう。
2. パソコンなどの機器を準備する
3. 開発言語を決め、ダウンロードする
4. データを集め、整形する
5. 環境構築ツールを導入する
6. AIモデルを開発し、学習を行う
7. モデルの評価、運用、改善をする
AI開発環境を構築するライブラリ一覧
ライブラリとは、一連の処理を行うなどの機能を有するソフトウェアのことです。
AI開発には、機械学習や深層学習を行うため、コードを書く必要があります。ライブラリを活用すれば、関数やコード挿入を簡易化でき、数値計算の自動化などを実現します。
ここからは、以下5つのライブラリについて詳しく解説します。ライブラリにより特徴が異なるため、ご確認ください。
PyTorch
Keras
scikit-learn
Jupyter Notebook
TensorFlow
TensorFlowはGoogleが開発したライブラリで、機械学習や深層学習に対応しています。Tensor(多次元配列)の操作に特化しており、データの読み込みや前処理・計算・出力などが可能。データフローグラフを構築できるため、複雑なネットワークにも対応できるでしょう。
また、Pythonだけでなく、C++やJavaScript向けのライブラリも提供しています。
PyTorch
PyTorchは、MetaのAI Reserarch Labで開発されたPython用の深層学習用フレームワークソフトウェアです。シンプルでわかりやすいPythonの特徴を活かせるよう、Torchを元に開発しています。
分散トレーニングに対応しており、拡張性を高めるトレーニングから現場でのパフォーマンス向上にも活かせます。
Keras
Kerasは、TensorFlow同様Googleが開発したライブラリです。構造がシンプルで誰でも扱いやすい特徴を持ち、初心者の方が機械学習や深層学習を行うのにも適しています。
Googleが開発しているため利用者が多く、他のユーザーと情報共有をしながら利用できる点も魅力です。
scikit-learn
scikit-learnは、Python用の機械学習ライブラリです。オープンソースとして公開されているため、個人・企業問わず誰でも無料で利用できます。
また、初心者でも簡単に機械学習ができる特徴があり、利用できるアルゴリズムが豊富で、サンプルデータセットまでそろっています。
scikit-learnで利用できるアルゴリズムとして、例えば下記が挙げられます。
◾️|サポートベクターマシン
◾️|ランダムフォレスト
◾️|回帰
◾️|分類
◾️|クラスタリング
◾️|次元削減
◾️|モデルの評価と選択
Jupyter Notebook
Jupyter Notebookは、プログラム作成や共有ができるWebアプリケーションです。オープンソースであるため、誰でも無料で利用可能。
パソコンなどにインストールすれば、PythonやRでのコーディングをWebブラウザ上だけでなく、インターネット接続なしで利用できます。
また、実行結果がすぐわかる対話型環境になっており、PDCAが回しやすいでしょう。
AI開発におすすめなツール10選
続いて、おすすめの下記AI開発ツールについても詳しく解説します。
ちなみに、AI開発ツールとは高度なプログラミング知識やハイスペックパソコンがなくても、AI開発ができるようにサポートするツールのことです。
Microsoft Azure Machine Learning
IBM Watson
Apple Create ML
MatrixFlow
DataRobot
SONY Neural Network Console
Deep Analyzer
SyncLect
Panasonic AI画像認識エンジン構築サービス
Google AutoML
Google AutoMLは、Googleが提供する最も知名度の高いAutoMLサービスです。
さまざまな機能が実装されており、高度なシステムを実現できます。
◾️|データの自動処理
◾️|AIモデルの構築
◾️|画像認識
◾️|動画認識
◾️|テキスト認識・翻訳
◾️|問題のデータの抽出
◾️|構造化モデルの構築
上記機能は直感的に利用でき、またマニュアルも用意されているため初心者でも安心です。
Microsoft Azure Machine Learning
Microsoft Azure Machine Learningは、マイクロソフトが提供するハイブリッドプラットフォームです。
多種多様な機能を備え、機械学習における以下ステップをすべてサポートします。
◾️|データの準備
◾️|モデルの構築とトレーニング
◾️|検証およびデプロイ
◾️|管理および監視
マイクロソフトでは、サイバーセキュリティの研究に年間1,000億円以上投資しており、セキュリティ面も安心です。
詳細:Microsoft Azure Machine Learningの公式ページ
IBM Watson
IBM Watsonは、IBMが提供するAIプラットフォームであり、かつ世界で最も有名なAIの一つです。画像やテキストなどの大量のデータを認識・分析し、そこから最適な答えとソリューションを提示します。
信頼性が高く、世界的金融機関の70%がWatsonを使用しています。
Apple Create ML
Apple Create MLは、Mac上で機械学習モデルをトレーニングするツールです。
さまざまなモデルに対応しており、具体的には以下の通りです。
◾️|画像
◾️|ビデオ
◾️|音声
◾️|モーション
◾️|テキスト
◾️|表形式データ
Apple製品に搭載されているSiriや写真Appの構築基盤を利用できるため、トレーニングにかける時間や手間を大幅に削減できます。
MatrixFlow
MatrixFlowは、先ほどご紹介したPythonなどのプログラミング言語を知らなくても、AI開発が行える機械学習プラットフォームです。
AI開発に必要なさまざまな機能が利用でき、具体的には下記の通りです。
◾️|データの前処理・データ解析
◾️|レシピ管理
◾️|学習の設定
◾️|学習済みAIの管理と推論
◾️|要因説明機能
データの前処理もできるため、開発にかかる手間を大幅に削減できます。
また、日本で開発されたため、日本語用のアルゴリズムを利用できる点も魅力です。
DataRobot
DataRobotは、MatrixFlow同様プログラミングなどの専門知識がなくてもAI開発ができる機械学習用のプラットフォームです。データを読み込み開始ボタンを押すだけで、1,000以上のアルゴリズムから最適手法を自動判断し、処理が行われます。
また、開発だけでなく本番運用もそのまま行えるため、開発したAIをすぐに運用できるでしょう。
SONY Neural Network Console
Neural Network Consoleは、ソニーが提供するAI開発サポートツールです。プログラミングをしなくても深層学習が行えるため、専門知識がなくても安心。
ネットワーク構築を自動化する機能があり、ドラッグ&ドロップなどの直感的操作で対応できます。
詳細:SONY Neural Network Consoleの公式ページ
Deep Analyzer
Deep Analyzerは、AI開発に関する専門知識がなくても、マウス操作で開発・学習・検証ができる深層学習ソフトウェアです。
代表的なアルゴリズムである、以下6つが設定されています。
◾️|画像分類
◾️|画像生成
◾️|ペア画像生成
◾️|物体検出
◾️|音源分類
◾️|異常検知
また、ブラウザから学習済みのAIを利用できる点も魅力です。
SyncLect
SyncLectは、データ統合管理や高速開発を実現するプラットフォームです。AIはもちろん、IoTやロボット、アプリ、チャットボットの開発にも利用できます。
スモールスタートの利用ができ、最短3日程度でAIのプロトタイプを開発・運用しながら精度を高める、アジャイル開発が可能。
多くのシステムやツールと連携するため、企業の保有データを有効活用できます。
Panasonic AI画像認識エンジン構築サービス
Panasonic AI画像認識エンジン構築サービスは、Panasonicが提供する学習データの作成からAI画像認識エンジン構築までできるツールです。
深層学習で画像認識の精度を高め、人が行う作業を自動化します。
データを外部に持ち出さずに構築できるためセキュリティ面も安心で、専門知識がなくても利用可能です。
詳細:Panasonic AI画像認識エンジン構築サービスの公式ページ
AI開発環境の選び方
前述の通り、AI開発環境にはさまざまなものがあります。どのようにAI開発環境を選べばよいか、悩む方もいるのではないでしょうか。
最後に、AI開発環境の選び方について解説します。
ユーザビリティ
コミュニティのサポートの充実度
目的に応じた開発環境の選択
AI開発環境の選び方の1つ目のポイントは、目的に応じた開発環境を選ぶことです。
AI開発環境により、使える機能もアルゴリズム・モデルも異なります。自社が開発したいAIには、どのツールが合うのかを考え、開発環境を選ぶようにしましょう。
自社に合う環境でなければ、効率が下がってしまいます。
また、無料で使えるものもあれば、有料のものもあり、無駄なコストが発生してしまう場合もあります。
ユーザビリティ
AI開発環境の選び方の2つ目のポイントは、ユーザビリティを考えることです。
どんなに良い機能があったとしても、使いこなせなければ意味がありません。なかにはPythonなどのプログラミング言語や専門知識がなくても、AI開発ができる環境もあります。
自社のAI開発を行うメンバーのレベルもふまえ、使いやすいものを選ぶと良いでしょう。
コミュニティのサポートの充実度
AI開発環境の選び方の3つ目のポイントは、コミュニティのサポートの充実度を確認することです。
AI開発環境を使うなかで、利用方法がわからないなど、壁にぶつかることが想定されます。ユーザー間で情報共有できるコミュニティがあれば、壁にぶつかった時も安心。
情報収集ができ、トラブルを解決しやすくなるでしょう。
まとめ
今回は、AI開発環境の概要やライブラリ、おすすめツール、選び方について解説しました。AI開発は、膨大なデータの取り扱いなど情報処理が求められ、システム稼働の環境が必要です。
また、AI開発と一言で言っても多くの工程があり、ライブラリやツールを活用すれば、効率的に開発ができるでしょう。
ツールを選ぶ際は、AIの開発目的やユーザビリティ、コミュニティのサポートの充実度をふまえ、選ぶのがおすすめです。