AIチャットボットは、様々なサービスのWebサイトと連携され、カスタマーサポートに導入されています。これまでは電話やメールなどに有人でしか対応できず、応答が遅くなりがちだという課題がありました。
この課題をチャットボットが、AIによる事前の学習やシナリオ設計でお客様への即時応答や受付時間の拡大を可能にしています。
チャットボットにはGoogleが提供する「BERT」など、無償で一般に提供されている技術や昨今、注目と人気を集める「Chat GPT」があります。その他に、企業や自治体が利用する有償のサービスもあります。
本記事では、チャットボットについて詳しく知りたい方に、わかりやすく仕組みや実際の導入事例をご紹介します。
AIチャットボットとは?
AIチャットボットは一言で表現すると、会話型AIの助けを借りて構築・配備されたソフトウェアプログラムです。ユーザーを支援したり、自然な会話形式でアンケートの実施や集計をしたりしています。
AIチャットボットの利用例としては、企業で顧客対応に利用されています。高度に訓練されたAIチャットボットは、顧客とのコミュニケーションで大きな助けをしてくれます。
顧客からの問い合わせを効果的に評価し、回答するほか、カスタマーサポートをパーソナライズして、常によりよいユーザー体験を提供しています。
■|チャットボットが注目された理由
チャットボットの基礎知識
チャットボットの動作は主に入力の生成(テキスト)、入力解析、出力の生成、強化学習に分かれます。
チャットボットの種類には、AI型とシナリオ型に分かれます。詳細は以下の表の通りです。
種類 | AI型 | シナリオ型 |
モデル | 事前学習させたデータとユーザーの利用で収集したデータをAIが解析し回答。 | ルールベース型で作成したシナリオに沿って会話を進め、回答を表示 |
特徴 | シナリオ型より高機能。 コストも多少高く、月額で数万や数百万~買い切りなどサービスにより、価格幅あり。 |
作成したシナリオからしか回答できませんが、設定が簡単で始めやすくコストもAI型より安価 |
メリット | 表現の揺れや難易度の高い質問への回答も可能。 データを蓄積、回答の精度があがる。 |
FAQ(よくあるご質問)などには、手間をかけずに導入可能。 シナリオ通りに回答するため、誤った回答がない |
デメリット | 初期段階では、学習が足りない場合があり、回答精度が不十分なことがある。 回答精度をあげるには、一定の学習期間が必要。 |
事前設定したルールやシナリオのみ可能。 多くの質問への対応には、事前に多くのルール設定が必要 |
チャットボットが注目された理由
チャットボットが注目された理由には、AIチャットボットの「Chat GPT」が登場したことがあげられます。
映画などのSFで表現されていた人間がロボット(AI)と自然な言語で会話することは、多くの人にとって憧れでした。映画などのフィクションの世界のみでなく、いつかは技術の進展により実現するものだと認識されていました。これが実際に実現したのが、一般向けに無償公開されているChat GPTのGPT-3のモデルです。
また、チャットボットの2022年度の企業規模別の導入割合は以下の状況でした。
企業規模 | 利用中 | 採用予定 | 採用予定なし | 無回答 |
マイクロ企業 | 22% | 43% | 22% | 13% |
スモール企業 | 20% | 60% | 18% | 2% |
ミディアム企業 | 11% | 80% | 9% | 0% |
ビッグ企業 | 12% | 71% | 17% | 0% |
AIチャットボットの仕組みと作り方
AIチャットボットは、大きく分けて「入力の生成」「入力解析」「出力の生成」「出力の生成」の4段階構成となっています。
以下で各項目をくわしく解説します。
■|チャットボットの作り方
チャットボットの仕組み
チャットボットは以下の4つの技術を利用し、構成されています。
項目(構成順) | 内容 |
1. 入力の生成 | ・ユーザーが答えを求める入力、クエリ、質問を入力すると稼働 ・SNSやチャットアプリ、モバイルアプリ、ウェブサイト上にチャットボットが入力 |
2. 入力解析 | ・AIチャットボットが入力を受け取ると、プロセスが稼働 ・自然言語処理(NLP)の一部分の自然言語理解(NLU)を利用 ・テキストを文節に分解、自然な発話の意図や感情、トーンを検出し入力の意味を探し出す ・機械学習エンジンが意図とデータベースを照合し、関連情報を取得 |
3. 出力生成 | ・ユーザーが何を言いたいのかを理解する ・問い合わせに合った最適な関連性のある回答をユーザーに提示 ・自然言語生成(NLG)の助けを借り、文章で回答を作成し、ユーザーに伝える |
4. 強化学習 | ・数十万回の相互の作用を経て、会話型AIチャットボットは山ほどの構造化データを収集 ・すべてのチャットボットの対話は、ユーザーとの成功か失敗かのどちらかに分類 ・ユーザーとの対話をもとに、AIチャットボットが学習し対応を洗練させることに繋げる ・情報はチャットボットが永続的に学習する基礎となる発話をストックすることに役立つ ・満足度の高いユーザー体験を提供するチャットボットの育成に繋がる |
チャットボットの作り方
チャットボットの開発は、まずプログラミング言語を選定します。
サービス提供する際には、WordPressのようなWebサイト基盤とAPI連携し利用することが多いため、JavaScript、PythonやRuby、Perlなどが主に利用されてます。
AIチャットボットの活用事例
AIチャットボットは幅広く利用されています。
企業のリード創出の支援から、自動受付、アンケート調査まで、AIチャットボットは企業の提供するサービスの顧客対応や満足度の向上に役立っています。
その他にも医療や教育など、さまざまな業界でAIチャットボットを使ってサービス展開をしているのかをご紹介します。
■|オンラインショップの自動受付
■|アンケート市場調査
■|症状の医療診断
■|教育現場支援
カスタマーサポート
オンラインでのサービスの購入などの商取引はコロナ禍以降、急増しています。AIチャットボットは、カスタマイズされた製品の提案、返金・交換、支払いに関することなどを24時間365日体制で行い、お客様をサポートすることに役立っています。
ECでチャットボットを利用するメリットには、ユーザーとのエンゲージメントを高められることがあります。
おもちゃのブロックで有名なLEGOは、チャットボットがユーザーと会話し、レゴを贈る場所、相手の年齢や興味、予算などの情報を取得します。そして、このデータを使って、ユーザーが選択できる関連するおもちゃのセットをリストアップし、オススメも行っています。
チャットボットが会話から取得した情報を元に商品をパーソナライズドで提案することで、売上の向上に繋がっています。
オンラインショップの自動受付
アパレル大手のファーストリテイリングが展開する「ユニクロ」では、チャットボットが顧客のお買い物のサポートに導入されています。
ユニクロのAIチャットボットは「UNIQLO IQ」の名前が付けられ、オンライン店舗のみならず実店舗とアプリの連携もバーコード読み取り機能などで可能にしています。UNIQLO IQは、注文やキャンセル、配送、返品や交換などをサポートしています。
アンケート市場調査
三菱総合研究所が開発したチャットボットは、新潟市で提供され「ひありん」の愛称で住民の意見集約に利用されています。従来は、自治体の職員が住民にアンケートやインタビューを実施するなどの手法で調査していましたが、双方の負担や工数が大きいことが課題でした。
そこで、チャットボットを導入し、住民と職員の両者の負担の軽減と、意見をスムーズに幅広く集約し自治体の業務の効率化に繋げています。
症状の医療診断
医療用AIチャットボットは、医療従事者が対応できない際に、チャットボットが患者さんの対応を行い、医療従事者をサポートしています。
訓練された会話型AIチャットボットは、ユーザーが関連する医療情報を探し、病院の予約を入れ、検査レポートを入手し、医療保険を処理するのを助けています。
教育現場支援
教育現場では、事務作業ワークフローの簡素化や、生徒の疑問解消にチャットボットが利用されています。その他にも、パーソナライズされた学習プログラムの提供も開始されています。
これまでのカリキュラムは、学生に一律で知識を提供し、等しく教育を受けられるように設計されていました。しかし生徒の教育に対する目的やニーズは人によって異なります。
そこで、AIと自動化の技術を活用し、学生の学習をカスタマイズやパーソナライズできるようにする取り組みが進められました。学習をカスタマイズすることで、学生は自分のペースで自身にあったコースを修了し、より深く理解できるようになりつつあります。
まとめ
チャットボットには、主に2つの種類があり、目的や用途、利用できるコストでAI型とシナリオ型から選択し利用されています。
チャットボットの導入は企業規模にかかわらず、導入が進み、採用を予定している企業まで含めると過半数を超えます。実際の事例でご紹介したように、各企業での導入の他、医療や教育、自治体での導入など我々の生活基盤に密接にかかわるサービスにおいてもチャットボットが利用されています。
今後様々な企業やサービスで、チャットボットによるサポートやサービス提供が進展していくことが想定されています。これまで馴染みがなかった方は本記事をご覧いただき、まずはチャットボットの基礎について知っていただく。
さらに、自身のよく利用するサービスなどでチャットボットを活用したサポート等を体験し、便利さを体感いただき、サービス理解を深めることをオススメします。